February 27, 2007

切ないはなし。

最近、皮膚科でアルバイト・ナースをしている。
皮膚科の数が少ないこともあるが、めずらしくきちんと説明のあるドクターが人気(多分)で、連日結構な数の患者さまで溢れかえっている。
もちろん色んな方がいらっしゃる。今日は「もらった薬を使っていない」方がいらっしゃった。

初診は1週間前。顔や上肢に紅斑が出来てかゆい原因不明の疾患で、ピークを迎えた後は徐々自然に治まり終息する。
まあ、そんなことを説明して、患者さまの気持ちを聴きながら対照療法の方法を決定するのがうちのドクターのやりかた。
結果、かゆみをおさえる内服薬と、皮膚の症状のひどいところに塗るweak(弱い)ランクのステロイド剤と全体に塗る非ステロイド剤が処方されていた。
ところが、それらをどれも使っていなかったというのだ。ただの一度も!
でも痒くて眠れないから、睡眠薬を飲んでいたというのだ。
痒くて仕方ないので、オロナインA軟膏を塗り、
皮膚のひどいところには、家にあったリンデロンVG軟膏を一日に何回も塗っていたというのだ。
その理由は「息子が先生んとこの薬はお母さんには合わないんじゃないかといった」からだそーだ。

私はひっくり返りそうになった。
なぜ痒みを押さえる薬は飲めなくて睡眠薬は飲めるんだ?!
オロナインA軟膏、ねっとりしてて全体に塗るにはさぞ不便があったことであろう!
リンデロンVGはstrong=強い=ランクのステロイドだよ〜?!

しかし…
ドクターは、うんうんとうなづきながら話を聴いていた。
それでよくなったのなら、いいですよ。
とまで声をかけている。
「お母さんのことを気にかけてくれる息子さんを持ってお幸せですね」と患者様を診察室から送り出し、背中が見えなくなってから「はあ〜っ」と大きなため息。
「がっくりきました…」と寂しそうにつぶやいていらっしゃる。
そりゃそーでしょー、そりゃそーですよー。

自分のコトだから、自分の納得いくようにするのが一番大切で、それが治療効果を上げる。
とは、いつもうちのせんせーが言ってることだが、それにしても怒らなかったせんせーはえらい。
私なら腹が立って、「主治医は息子さんにおまかせ致しましょう」などと厳かにいって、主治医の立場を放棄したくなるかも知れない。

せんせーも私もテンション下がったまんま、その後の診療をこなした。やれやれ。
切ないのぅ。